帯状疱疹というご病気をご存じでしょうか?
体幹や顔面などの皮疹と共に激痛が走る感染症で、後遺症に悩まされることも多い病気です。
加齢とともに発症率が高まることから、特にご高齢の方には注意が必要です。
ここでは、そんな帯状疱疹を予防することのできる「帯状疱疹ワクチン」についてご紹介します。
帯状疱疹とは
帯状疱疹の原因は「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」です。
初めてこのウイルスに感染したときは「水疱瘡(みずぼうそう)」と呼ばれ、全身に赤い発疹や水ぶくれが生じます。
水疱瘡は主に子どもの病気です。
しかし、水疱瘡が治ったあともウイルスは体内に残り続け、何らかの原因でウイルスが再度活性化すると帯状疱疹として発症します。
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫が低下したときに発症するので、加齢もリスクの1つです。
50歳ごろから発症が増え、90歳代では半数が罹患するともいわれています。
加齢に伴って合併症の「帯状疱疹後神経痛」が残る可能性も高くなり、発症の予防と早期に受診して治療を開始することが大切です。
帯状疱疹の症状
ビリビリした痛み・痒み(数日~1週間程度)
↓
体の片側に帯状の赤い発疹が出現
↓
微熱やリンパ節の腫れ
↓
発疹が水ぶくれや膿疱になり、破れる(1週間程度)
帯状疱疹の後遺症
- 帯状疱疹後神経痛
- (顔に発症)顔面神経麻痺
- (顔・耳の周囲に発症)めまい、耳鳴り、難聴
- (目・鼻の周囲に発症)視力低下
帯状疱疹ワクチンの種類と効果
帯状疱疹の発症を予防し、発症したときの症状を軽くするためのワクチンが、大きく分けて2種類あります。
水痘ワクチン | シングリックス | |
---|---|---|
種類 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
回数 | 1回 | 2か月間隔で2回 |
対象年齢 | 50歳以上 | |
接種できない人 | ・免疫抑制剤を使用している人 ・抗がん剤治療など免疫が低下する治療をしている人 ・妊婦 ・発熱している人 ・感染症など、重篤な急性疾患にかかっている人 |
・発熱している人 ・感染症など、重篤な急性疾患にかかっている人 |
副反応 | ・発赤(44%) ・痒み(27%) ・腫れ(17%) ・疼痛(15%) |
・疼痛(78%) ・発赤(38%) ・腫れ(26%) ・筋肉痛(40%) ・倦怠感(39%) ・頭痛(33%) |
3年間の発症予防効果 | 51.3% | 90~98% |
神経痛の発生抑制率 | 66.5% | 85%以上 |
効果の持続期間 | 8~10年で効果が消失 | 10年後でも84%の有効率 |
水痘ワクチンの方は1回の接種で済みますが、投与できない条件が多いです。
全体的に効果が高いのはシングリックスですが、副反応の「疼痛」が強いというデメリットがあります。
どちらを接種するかは、個々に判断が必要となりますので、ご相談ください。
帯状疱疹やワクチンに関するよくあるご質問
神経痛が残る可能性はどのくらいですか?治療法はありますか?
帯状疱疹の皮膚症状が治ったあと、3か月以上にわたって神経痛が残る人の割合は、70歳代までは20%ほどですが、80歳を超えると 30%以上にものぼります。
「ビリビリ電気が走るような痛み」「焼けるような痛み」と表現され、服が触れるだけでもつらかったり、眠れなかったりすることも少なくありません。
神経痛に対し薬で治療をおこないますが、効果が十分でないことが多く治療が難しいのが現状です。
すでに帯状疱疹に罹患しましたが、ワクチンを接種する意味はありますか?
帯状疱疹は、ほとんどの場合は1度しか発症しませんが、6%ほどの方は再発します。
高齢になるほど神経痛などの合併症を起こす可能性が高いです。
接種可能な方は、どちらのワクチンでもよいので接種することをおすすめします。
ワクチンの費用は自費ですか?
自治体によっては接種費用の助成があります。
水疱瘡にかかったことがありません。帯状疱疹ワクチンを打ってもいいですか?
50歳以上で水疱瘡の罹患歴がなく、1歳以上で2回の水痘ワクチン接種歴がない、あるいは抗体価が一定の基準に達していない方は、「水痘ワクチン」の接種をおすすめしています。
ワクチンの副反応が不安です。
帯状疱疹ワクチンは、注射した部分の痛みや腫れといった一時的な副反応は非常に多いのですが、後々まで残るような「後遺症」の報告はほとんどありません。
ごく稀にアナフィラキシーショックを起こす可能性もありますが、接種後はしばらく安静にしていただき、仮に異変が出た際にはすぐに対応いたします。
以前に他のワクチンの接種でアナフィラキシーショックを起こしたり、アレルギー反応が出たりしたことがある方は、事前にお申し出ください。
50歳未満はワクチンを接種できないのですか?
50歳未満の方でも、ワクチンを接種することはできます。
帯状疱疹を発症したことがある、免疫抑制剤を使用しているなど、リスクの高い方はワクチン接種についてご相談ください。
まとめ
帯状疱疹は、発疹や水ぶくれなどの皮膚症状だけでなく、神経痛の後遺症が残る可能性のある病気です。
加齢とともに発症の可能性が高まります。
ワクチンの接種によって高い確率で帯状疱疹の発症を予防することができますので、ご興味のある方はぜひ当院へご相談ください。